矢部川シンポジウム2025開催しました。
シンポジュウム概要
矢部川シンポジウム2025 「柳川の水管理システムのこれから


~水を“もたせ”る知恵が未来をひらく~」
日時:令和8年3月7日(土) 会場:城内コミュニティ防災センター(福岡県柳川市)
【基調講演】 「柳川の水管理システムのこれから」 講師:吉川 夏樹 氏(新潟大学農学部 教授)
【パネルディスカッション】 〈話題提供・パネラー〉 ・乗冨 賢蔵 氏(株式会社乗冨鉄工所 社長) ・梅崎 秋敬 氏(柳川市産業経済部水路課 課長) ・平野 幸二 氏(水の会) 〈コーディネーター〉 ・島谷 幸宏 氏 (熊本県立大学特別教授/大正大学客員教授/九州大学名誉教授)
特設サイト http://www.yabegawa.net/464/ 主催:矢部川をつなぐ会、水の会、NPO有明会 後援:柳川市 国土交通省筑後川河川事務所「令和7年度矢部川防災意識啓発委託事業」
「柳川の水管理システムのこれから」
去る3月7日、柳川市の城内コミュニティ防災センターにて「矢部川シンポジウム2025」を開催いたしました。テーマは「柳川の水管理システムのこれから」。
矢部川をつなぐ会(水の会)・堤 ●「矢部川シンポジウム2025」の動画


会場には市民や専門家、行政関係者、さらには将来を担う多くの高校生ら約140名が詰めかけ、熱気に包まれました。
「もたせ」の活用で浸水被害86%減
基調講演に登壇された新潟大学の吉川夏樹教授は、柳川で一年間にわたり実施した詳細な調査成果を発表されました。特筆すべきは、堀割や水門で水の流れを一時的に留める伝統の知恵「もたせ」の科学的検証です。この「もたせ」に、市が取り組む「先行排水」を組み合わせることで、百年に一度クラスの大雨であっても、浸水被害を最大86%(平均67%)軽減できることが数値で明らかになりました。アジア各国への「MOTASE」のシステムを展開する構想も語られました。
長年、先人の経験と勘で受け継がれてきた仕組みが、現代の「流域治水」の理想的なモデルであることが証明された瞬間でした。
続く討論では、この「水の遺産」をいかに次世代へ繋ぐか、多角的な議論が交わされました。水門メーカーの乗冨鉄工所の若社長の乗冨賢蔵氏は、管理人の高齢化という課題に対し、ICTを活用した水門の遠隔操作技術や、若者が惹かれる「開かれた企業文化」(OPEN THE GATE)による継承を提唱されました。
柳川市水路課の梅崎秋敬氏は、歴史的な水路の多機能性を解説し、行政と市民が一体となって堀を守る「堀を守る行動計画」の重要性を説かれました。
当会の平野幸二は「もたせ」を、単なる構造物ではなく「地域全体で水を受け止める知恵」と定義しました。また現在の先行排水によって堀が空になる際の生態系への負荷(生き物の避難所の消失)や、防火用水の確保といった運用上の課題を指摘しました。その上で、かつてのように市民が主体となって「柳川らしい堀」を共に作る姿勢を再興すべきだと強く訴えました。
全体討論を締めくくったコーディネーターの島谷幸宏教授は、これからの時代を、立場を超えて共に作り上げる「共創」の時代であると定義されました。そこで強調されたのが、「これからは誰かにお願いするのではなく、誰もが自分に出来る事をやる時代。お金がある人はお金を、労働力がある人は力を、知恵がある人は知恵を出し合うことが重要である」という主体的な関わりの呼びかけです。自然を産・官・学・民の「仲間」として捉える「五者連携」の考え方は、柳川の持続可能な地域づくりの新たな指針となります。
会場の前列で真剣にメモを取る高校生や若い研究者達の姿は、柳川の知恵を世界へ、そして未来へと繋ぐ希望の光です。 伝統と最新技術、そして私たち一人ひとりの行動を融合させ、柳川が誇る「水の文化」を次なる千年に繋ぐ決意を新たにした一日となりました。
吉川教授の基調講演資料